ゲーミングUMPC AOKZOE A1のクラムシェル化改造
2023/06/10作成

かつては東芝LibrettoやPDAで遊び、SHARP BrainをWindows CEとして使えるように改造し、20年以上にわたって小型軽量のWindowsノートパソコンやパームトップデバイスにロマンを求めてきました。
このジャンルは低消費電力でも性能が高いCPUを搭載したGPD Winの登場によりコンセプトレベルでの完成形が見えてきたのですが、ポインティングデバイスやキーボードの使いにくさは全く解消される気配がない事による失望感もありました。

今回はちょっとした気の迷いにより、Steam Deckを筆頭に最近トレンドになりつつある任天堂Switchのような携帯ゲーム機型UPMC(スレート型、英語圏ではタブレットの事をスレートと表現するが、それとは別物)のAOKZOE A1を購入してみました。
購入したのはRyzen 7 6800U、LPDDR5-6400 32GB、NVMe SSD 2TBの構成で、最上位モデルのものです。
この機種は携帯ゲーム機型Windows機の中ではコストパフォーマンスが高く、仕様的にほぼ同一で競合のONEXPLAYERシリーズやAYA NEOシリーズと比べても一段と安いのが特徴です。

このような製品はゲーミングPCを小型化したゲーミングUPMCとして位置づけられており、ゲームを遊ぶ事に特化しています。
PC向けのゲームが遊べるような性能を維持しつつ小型化した代償としてキーボードは内蔵されていませんし、このままではWindows機としてゲーム以外の用途に使うのは困難です。
GPD WINシリーズのようにキーボードを内蔵した機種もありますが、あまりにも窮屈かつキー配列が特殊なため普通のWindowsノートパソコンと同様に使うには無理があります。
一方でポインティングデバイスについては、比較的高性能なジョイスティックやトリガー向きのボタンが内蔵されているため、従来のUMPCよりは操作しやすいです。
そこで今回はAOKZOE A1にノートパソコンと同程度の大きさでまともな配列のキーボードを取り付け、普通の高性能なノートパソコンとして使えるようにしてみました。

完成形

これが今回製作した完成形です。
総重量は968g、突起含む外寸は幅283mm高さ135mm厚さ58mmとなりました。
一般的なノートパソコンのように画面の角度を任意に調整する事はできませんが、固定の角度で自立し、また本体背面のスタンドを併用すればある程度は角度を調整できます。
キーボードはごく普通の配列で打ちやすく、サイズも12インチノートパソコンと同程度あるため、窮屈さはほとんどなく快適にタイピングできます。
カーソルを動かす時は本体を握るようにしてスティックを操作できますし、これ単体は意外と快適なのですが、キーボードとマウスの間を頻繁に往復するような操作は少々厳しい(片手でタイピングするか、スティックを触る方の手首を捻る動作になる)と感じました。
総合的に見ると、コントローラを握って遊ぶようなゲーミング性は犠牲(製品コンセプトを全力で無視するスタイル)になりますが、従来のUMPCのように短時間でも苦痛というレベルではなく、元々の性能が高い事も相まってWindows機としては十分に実用に堪えると思います。

ここからは改造の手順を記します。
改造にあたって用意したものは下記です。

USBキーボードは薄型で本体サイズと同程度であれば何でもよいですが、日本語配列で選ぶ場合は実質的にこれ一択です。
英語配列なら安価なものが多数ありますが、日本度配列かつ背面に突起がない薄型なものに限定すると、表記だけ日本語にしただけで電気的に英語配列のものか配置がかなり特殊なものしかなく、選択肢が全くありません。

3Dプリンタについては、ヒンジ部分を作成するために使いましたが、近所のホームセンターで適切なサイズの蝶番が売っていれば必要ありません。
市販の蝶番はねじで固定することを前提にしているため、設置面積が狭く回転軸から距離が取れない事によりモーメントに耐えられず外れてしまう場合が多いです。
今回の用途では強度そのものはほとんど必要ないため、設置面積を大きくしたものを3Dプリンタで印刷して使用しました。

次にUSBキーボードの配線を50mm程度残して切断し、USB Type-Cコネクタを半田付けしました。
底面中央にUSB Type-Cポートがない機種の場合は適宜長さとコネクタを変更してください。

3Dプリンタでヒンジ部分を2個製作し、それらを両面テープでUSBキーボードと本体に接着しました。
その状態でさらにヒンジの裏面に両面テープで適当なゴム足を接着しました。

底面

これらを取り付けるとこのような感じになりました。

ヒンジ部

キーボードを開いて本体を自立させるとこのようになりました。
ヒンジの位置やゴム足の高さにより自立時の角度は変わりますが、AOKZOE A1の場合は握る部分の突起が大きく重心が後ろに寄っているためこれ以上角度を大きくすると倒れます。
倒れないようにするには本体のスタンドを開いて使います。
スタンドがない機種の場合はキーボードを重くするしかありませんので、携帯性が損なわれてしまい、この改造のメリットが失われますので、スタンドがあるONEXPLAYER等に適用するのが吉です。

充電スタンド

ちなみにAOKZOE A1にはONEXPLAYER用のドックが公式に使えるようになっています。
この改造をするとドックに干渉して使えなくなるため、ついでに充電スタンドを3Dプリンタで製作しました。
ここで使用した材料は下記です。

充電時

スタンドで充電中の様子です。
市販の充電専用スタンドでもよいのですが、差別化のためにアダプタをThunderbolt 3対応のもの(つまりFull-featured配線)にしてあるため、他社製の汎用のドックに接続して使う事もできます。
スタンドに取り付けるにあたってキーボードのUSBコネクタを抜いてありますが、この状態ではキーボードを開かない(物理的には開くものの底面が接地せずキーを打てない)ため、実用上は問題ありません。
また、必要であればスタンドを使わずに本体上部のポートからも充電できますので、充電しながらキーボードを使えないわけではありません。

以上、携帯ゲーム機型ゲーミングUMPCをクラムシェル型に改造した結果でした。
今回設計した3Dプリンタ用の部品についてはSTL形式の3Dモデルデータを公開しておきます。
改造自体は非常に簡単ですので、ゲームはしないがUMPCとしてしっかり使いたい方は試してみてはいかがでしょうか。


目次 質問フォーム Q&A このサイトについて トップページ