Xiaomi POCO X3 Proの水没対応防水化改造
2021/08/21作成
2021/10/04更新

これまでスマートフォンを買い替える際は、事前にroot化等の情報が揃っている事や、新品でも3万円程度と安く出回っている事から、1~2世代前のハイエンドクラスを選んできましたが、今回は発売当初からこれらの条件を満たすXiaomi POCO X3 Proを見つけたので購入しました。
この機種は新品で3万円程度でありながら2年前のハイエンドQualcomm Snapdragon 855搭載機種とほぼ同等の構成ですが、新製品であることからOSも最新のAndroid 11が搭載されています。
これまで使用していたメイン機はSony Xperia XZ1 Dualであったため、サイズと重量(好みの問題)、および防水性能(XZ1 DualはIP68等級)以外の点では難なく乗り換えられる仕様です。
今回問題となる防水性能は、X3 ProはIP53等級となっており、XZ1 Dualと異なり水没には(仕様上は)一切耐えられないことになっています。
YouTube等でバットや皿に2分間程度水没させて問題ないことを確認する動画がいくつかありますが、このような容器は水深50mm程度(もしくはもっと浅い)しかなく、水圧が非常に低いため本機のP2i撥水コーティング程度で対応できてしまい、水没の検証としては相応しくありません。
もっとも水中ではタッチパネルが動作しないので、水中で使うことではなく誤って水中に落としてしまうことに対する耐性を評価すべきで、その場合はアスファルトの水たまりレベルの浅さではなく、トイレの便器、洗面器、洗濯機の洗濯槽等を想定した一定の水深で実験するのが適切です。
そこで今回は、一定の深さでの水没に耐えることを目標に本機に防水加工を施し、実際に水没させてみました。

まず初めに分解動画を見て、どの穴を補強すればよいかを検討しました。
基本的には全ての穴や隙間を防水シールで塞げば水没に耐えられますが、塞ぐことで機能に不具合が出るものがあるため、塞ぐ必要が無い箇所は極力塞がないようにします。
個別の箇所に対する考え方をまとめました。
結論は下側のスピーカーが最大の弱点、次いでUSBポート、イヤホンジャック、SIMトレーが弱点となります。

箇所塞ぐと起きる問題どのように塞ぐべきか本機の現状今回の対応
USBポート充電ができなくなる取り外しが必要端子部樹脂封入、コネクタ外周にゴムパッキンがあるが、接触面の応力が不均一(IPX5相当)何もしない
イヤホンジャックイヤホンが使えなくなる取り外しが必要端子部樹脂封入、コネクタ外周にゴムパッキンがあるが、接触面の応力が不均一(IPX5相当)何もしない
マイク(上側)録音の音量が非常に小さくなる通気性のある材料が必要MEMSマイク外殻に直結、端子露出なし、マイク外殻にゴムパッキンあり(IPX5、IPX7相当)何もしない
マイク(下側)録音の音量が非常に小さくなる通気性のある材料が必要MEMSマイク外殻に直結、端子露出なし、マイク外殻にゴムパッキンあり(IPX5、IPX7相当)何もしない
スピーカー(上側)音声の音量が非常に小さくなる通気性のある材料が必要スピーカー外周に防水両面テープあり(IPX5、IPX8相当)何もしない
スピーカー(下側)音声の音量が非常に小さくなる通気性のある材料が必要ゴムパッキンがあるが、接触面がメッシュのため隙間あり(IPX3相当)防水透湿膜を追加
赤外線出力リモコンアプリが動作しなくなる赤外線を透過する材料が必要接着剤固定(IPX6、IPX8相当)何もしない
SIMトレーSIMカードの交換が出来なくなる取り外しが必要ゴムパッキンがあるが、接触面の応力が小さい(IPX5相当)ポリイミドテープで封止
本体右上の穴(スピーカー用のバスレフポート?)不明(塞いでも特に変化なし)不明不明(分解動画には映っていない)ポリイミドテープで封止
各ボタンの隙間ボタンが押せなくなる弾性のある材料が必要指紋センサー樹脂封入、内部にゴムパッキンあり(IPX5、IPX7相当)何もしない
ディスプレイとフレームの隙間特になし特になし全周に防水両面テープあり(IPX5、IPX8相当)何もしない
背面カバーとフレームの隙間特になし特になし全周に防水両面テープあり(IPX5、IPX8相当)何もしない
背面カバーとカメラカバーの隙間特になし特になし全周に防水両面テープあり(IPX5、IPX8相当)何もしない

今回はIPX7相当(ただし水深1mの環境を用意できないため、150mmで30分間とした)を目指すのですが、そのためには最低でもスピーカー(下側)、USBポート、イヤホンジャック、SIMトレーに処理を施す必要があります。
一方で普段の使用感を損なわないことを目的に、かなり挑戦的ではありますが、USBポートとイヤホンジャックには何も処理をしないことにしました。
したがって今回の防水性能はIPX5相当(USBポートとイヤホンジャックも塞げばIPX7相当)になると考えられます。

外観左下

左下側の外観です。
USBポートとイヤホンジャックはそのままにしてあります。

外観右上

右上側の外観です。
本体右上の詳細不明な穴を念のため塞いでありますが、それ以外はそのままです。

スピーカー(下側)

スピーカー(下側)です。
防水透湿膜を貼り、ポリイミドテープで固定しました。
防水透湿膜は多孔質ポリウレタンシートであり、登山用レインウェアや防水ベッドカバー等から取り出せます。
通気性が不十分なため音量を50%程度以上にするとシートのビビり音が聞こえますが、上側のスピーカーのみでモノラル出力にするか音量を下げれば音質は良好です。

SIMトレー

SIMトレーです。
頻繁に取り出す個所ではないので、ポリイミドテープで封止しました。

本体右上の穴

本体右上の穴です。
用途はよく分かりませんが、念のためポリイミドテープで封止しました。

実験環境

今回の実験環境です。
バケツに160mm程度の深さまで水を入れ、本機を水没させた際に最も浅い部分が150mm以上となるようにしました。

実験開始時

本機をストップウォッチを起動した状態でバケツに入れました。
余談ですが、画面上側から入水させるとタッチパネルの誤動作を抑えられます。

実験終了時

30分間経過しましたが、ストップウォッチは継続して動作していました。

動作確認

本機をバケツから取り出し、各種動作確認を行いました。
概ね問題ありませんが、本機を乾燥させた後もUSBポートとイヤホンジャックが誤動作が継続し、電源を切るまでは正常に戻りませんでした。
そのため、故障はしていませんが、IP規格的には恐らく不合格と考えられます。

今回はIPX5相当と考えられる条件で水没試験を行いましたが、想定の通りUSBポートとイヤホンジャックから浸水したと思われる不具合が発生してしまいました。
結局故障には至りませんでしたので、使い勝手を損ねることなく不意な水没に耐えるという意味では十分に意味のある改造といえるのではないでしょうか。
ただし改造部分が指に当たって剥がれてしまう可能性があるので、改造後はケースまたはバンパーの装着をお勧めします。

2021/10/04追記
結果が芳しくないため、一部改善して再度試験してみました。
変更箇所を以下に示します。

箇所今回の対応
USBポート市販のプラグを加工して追加
イヤホンジャック市販のプラグを加工して追加
スピーカー(下側)撥水スプレー3M Scotchgardを塗布した不織布を追加

プラグ

今回追加したプラグです。
市販品ですが、本機の穴はコネクタに対して若干大き目(0.2mm程度)なため、プラグに弾性接着剤を塗って肉盛りしました。
プラグを差し込んだ際に少し変形して食い込む感じにしてあります。
素材が繊維ではないので気休めですが、更に撥水スプレーを塗布しました。

外観下

下側の外観です。
使い捨てマスクから取り出した不織布を切り取り、撥水スプレーを塗布し、ポリイミドテープで固定しました。
不織布の孔径は5µm程度と言われていますので、撥水スプレーの水に対する接触角を115°と仮定すると、理論上は20℃の水の場合で水深2.5mまで耐えられる計算です。
何も貼らない場合と比べて音量は少し小さくなりますが、上記の防水透湿膜より通気性が改善されたため、最大音量でもビビり音が聞こえなくなりました。
周波数特性的にも劣化は気にならず、音質はかなり良好です。

実験開始時

同様に、本機をストップウォッチを起動した状態で水の入ったバケツに入れ、水深150mm以上の位置に安置しました。
ちなみに2台持ち運用なので、試験は前回とは別の個体で行いました。

実験終了時

30分後に本機を水から取り出しました。

浸水確認

USBポート、イヤホンジャック、下側スピーカーに水が浸入しているか確認しました。
USBポートとイヤホンジャックにはわずかに水滴が入っていましたが、空間が残っていたので、本機のゴムパッキンより中へは浸透していないと思います。
一番の弱点と考えられる下側スピーカーには一滴も水が入っていませんでした。

ここで各種動作確認を行いました。
今回はUSBポートとイヤホンジャックの誤動作は発生せず、完全に正常動作ですのでIP規格的にも合格と言えるはずです。

以上より、水深150mmですが完全な防水が達成できたと言えると思います。
ハイエンド機種ではキャップレス防水が当たり前になっている現在では少々古臭く感じますが、充電時にプラグを抜く5秒の手間を惜しまなければ全く問題ないでしょう。


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