スマートフォンGoogle Nexus 5Xのメインメモリを4GBに換装
2018/09/17作成
普段はGoogle Nexus 6Pを使用しているのですが、先日Nexus 5Xのジャンク品を複数個入手したため、特に意味もなくメインメモリの換装に挑戦してみました。
Nexus 5Xは2015年発売の機種で、メインメモリとして64ビットでDDRレート1866MHzのLPDDR3 SDRAMを2GB搭載していますが、CPU側の仕様や同CPUを搭載した他機種の実績から技術的には換装可能であり、XDA Developersによると中国のとある修理業者ではCPUの交換の際にメモリを3GBまたは4GBにアップグレードしてもらえたそうです。
しかし実際はメモリICがBGA接続の表面実装であり、電極間のピッチも0.5mmと非常に狭く、必要な機材や技能の観点から個人での半田付けは困難です。
この場合、工業的には数万円以上するリワークステーションを使用しての作業となりますが、個人でも比較的安価に入手できるヒートガンまたはホットプレートで代用できます。
今回はすでに持っていたヒートガン、共晶クリーム半田、半田の融点より高温(200℃程度)で揮発するフラックスを使用しました。
ちなみに以下の作業手順とほぼ同等(メモリを交換せずに外したものを再度取り付け)の実演動画がYouTubeに公開されていますので、実際にやってみたい方はそちらも確認することをお勧めします。
まずは材料となる216ピンBGA接続のDDR3用メタルマスク(ステンシル)と交換用のメモリICをAliExpress等で調達しました。
今回はSK hynix製4GB品のH9CKNNNCPTMTLR-NUHを選択しましたが、3GBでよければもう少し安価なSamsung製3GB品のK3QF6F60AM-QGCF(Nexus 5XのベースとなったLG G4で採用されている型式)でもよいと思います。
これらとは別に300℃程度まで耐えられる厚さ0.1mm程度のヘラがあると後の作業が楽になります。
もし無ければ0.1mm厚のステンレス板を適当にカットしたものでも構いません。
本体を分解し、基板を取り外した後、金属シールドを取り外すとメモリICが見えます。
分解の手順はiFixit等が詳しいため、そちらを参考にしてください。
メモリを上からヒートガンで加熱しながらメモリとCPUの間にヘラを差し込み、持ち上げるようにして外しました。
メモリとCPUの間には半田以外に補強用のアンダーフィルが充填されているため、無理矢理持ち上げるとメモリが割れたり電極面が剥がれたりしますので、ヘラでアンダーフィルを切るように少しづつ引きはがすのがコツです。
更にメモリを外した後、アンダーフィルを除去しました。
アンダーフィルが残っているとメモリが浮いてしまって半田付けに失敗するので、かなり念入りに削ぎ落としたため、実はこの作業が一番時間がかかりました。
用意した新しいメモリに半田ボールを実装する前にメタルマスクを適当なサイズに切り落としました。
メタルマスクが加熱時に反り返るのを防ぐためですが、あらかじめ切り欠き等で対策されたものであっても切り落とすのが無難です。
メモリ側にCPUとの接点となる半田ボールを実装するため、メモリの電極面とメタルマスクの穴位置を合わせ、その状態でクリーム半田を刷り込んでヒートガンで加熱しました。
穴位置は±0.1mmレベルで合わせる必要がありますが、失敗しても半田を除去すれば(常識的な範囲内で)何回でもやり直せますので、繰り返し練習して慣れましょう。
CPUの上にフラックスを塗り、その上にメモリを乗せて位置を合わせた後、ヒートガンで加熱してメモリを半田付けしました。
この位置合わせも±0.1mmレベルが要求されますが、コツとしてはメモリとCPUの四辺が平行なままメモリ側の半田ボールがCPU側の電極に乗り上げて不安定になるところを探します。
また加熱中に半田が十分に融解している状態でメモリをずれない程度に真上から軽く押し付けるか叩くと成功率が上がります。
元通りに組み立てて電源を入れたところ問題なく起動しました。
Android上でメモリ容量を確認すると3.9GBと認識されており、正常に動作しているようです。
この後、いくつかベンチマークアプリを実行しましたが、強制終了やフリーズもありませんでした。
ここまでで材料の準備に2週間、作業の習熟に1日、実際の交換作業に約2時間かかりました。
材料費はメタルマスクと4GBメモリで約3,000円でした。
Androidでは基本的にシングルタスクで操作するためメインメモリが倍増してもほとんど意味がありませんが、Webブラウザとゲームを頻繁に切り替えるような場合は作業内容がキャッシュされやすくなり確実に効果が感じられました。
元々Nexusシリーズは軽快なこともあり、2017年のミドルハイか2018年のミドルレンジ程度の性能と快適性が得られる結果となりました。
手間と費用の割には結果が微妙ですが、自己満足ということで良しとします。
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