特殊仕様USB 3.0 OTGケーブルの制作
2016/02/07作成

近年、スマートフォンやタブレットのような小型コンピュータの普及により、標準サイズのUSBポートを持たず必要な時にだけ変換ケーブルを用いてUSB機器を接続するものが増えてきました。
これらは一般的にはUSB On-The-Go(通称OTG)と呼ばれています。
ただしOTGには大別して2種類存在し、一つは通常は端末がデバイスとして動作するが、変換ケーブルを使用するとホストとして動作するもの、もう一つは端末がホストとしてのみ動作するが、サイズの都合で変換ケーブルが必要なものです。
厳密には後者はOTGではなく、通常は変換ケーブルの配線も異なるのですが、非常に混同されており、多くの場合ケーブルや端末がどちらのタイプであるか明記されることなく販売されています。
そのため通販サイトのレビュー等ではケーブルと端末の相性問題として取り上げられることがあります。
USB 2.0までは信号線が1組しかなかったため、結果的に両者の配線がほぼ同一(IDピンのプルダウンが必要かどうかという程度、通常はプルダウンで両者に対応可能)となりほとんど問題が表面化しなかったのですが、USB 3.0では送信専用と受信専用の信号線が1組ずつ追加されたため、両者の配線に互換性が無くなり、前述の問題が発生しています。

今回はLenovo ThinkPad 8(USB 3.0のホストとしてのみ動作するタイプ)用に変換ケーブルを制作しました。
この機種はホスト機能しか持たず、OTG規格に準拠していないため、一般的に販売されている大半の変換ケーブルでは動作しません。
このタイプのケーブルも販売されていますが、非常に種類が少なく、別の相性問題もある(USB端子からの充電機能の関係でIDピンのプルダウン有無の問題が再発している)ため、正常に動作するものの入手は困難となっています。
今回制作するケーブルはThinkPad 8専用としましたが、後述の抵抗値を変更する事で、同タイプのケーブルを必要とするASUS TransBook T300 ChiやSHARP Mebius Padにも適用できると思います。

初めに材料を用意しました。
市販のケーブルを改造してIDピンの配線のみ変更する方法と、コネクタと導線を半田付けして一から組み上げる方法で試しました。
市販のケーブルの改造には以下の製品が利用できます。
以下は配線の確認が取れた一例であり、同じ配線であれば基本的に何でも構いません。
また、コネクタ単品はaitendo.cc等で販売されています。
必要なのはコネクタと適当な導線だけですので、配線が異なる普通のOTG用変換ケーブルを分解しても入手できます。

配線

変換ケーブルの配線図です。
前述の市販のケーブルではIDピンが無接続となっているため、ここに抵抗を取り付けました。
ThinkPad 8の場合、本来IDピンのプルダウン抵抗は0(短絡)とするべきですが、今回は裏ワザとしてOTGの仕様外である22kΩを使用しました。
このようにする事で、ケーブル単体で使用してVBUSピンに外部から電源を供給しない場合、ThinkPad 8から機器に電源が供給され、さらにこの状態で外部から電源を供給すると、機器との通信を切断せずにThinkPad 8への充電が出来るようになります。
なお、短絡または約18kΩ以下ではThinkPad 8からの電源供給のみ(ThinkPad 8への充電は不可)、約30kΩから約150kΩでは充電しながらの動作のみ(ThinkPad 8からの電源供給は不可)、約150kΩ以上または無接続では機器への電源供給のみ(ThinkPad 8からの供給および充電は不可)という結果でした。
ThinkPad 8以外では未確認ですが、これらの抵抗値や挙動が異なるかもしれません。

抵抗値電源供給無し電源供給有り動作中の充電
短絡~18kΩ××
18~30kΩ
30~150kΩ×
150kΩ~無接続××

改造ケーブル

COMON 3AMB-L02を改造したものです。
Micro-B側のモールドを継ぎ目に沿ってカッターで切断し、内部のパテを削ってIDピンとGNDピンの間に抵抗を半田付けし、再びモールドを被せて瞬間接着剤で固定しました。

自作ケーブル

単体のUSB 3.0 Type AコネクタとMicro-Bプラグを配線したものです。
ケーブル全体がフラットになるように配置し、プラグの表裏方向に曲げやすくしました。

2種類のケーブルを制作しましたが、どちらも特に不具合なくSuperSpeedモードで通信できています。
充電しながらの使用でも、ケーブルの発熱や電流不足によるバッテリー残量の減少は見られませんでした。

一般的な配線

余談ですが、大半のOTG変換ケーブルの配線はこのようになっています。
このようなケーブルから改造する場合はMicro-B側のSSTX-、SSTX+、SSRX-、SSRX+の4か所(前述の裏ワザを適用する場合はIDを含めた5か所)を取り外す必要があります。


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