USBサウンドユニットaim AS372の改造 2台目
2013/05/02作成

前回の改造であまり納得のいく結果にならなかったため、オペアンプ等を交換していたのですが、ついに基板のパターンが剥がれてしまったため、もう1台aim AS372を購入し、再び改造に挑戦してみました。

改造した箇所は以下の通りです。
前回の教訓を生かし、今回はイヤホンやヘッドホンを接続したときの高負荷時の音質を重点に置いて部品を選択しました。
前回の改造の後でカップリングコンデンサをオーディオ用のニチコン FWからオーディオ用ではないルビコン MCZに交換したところ、RightMark Audio Analyzerの測定結果に全く違いが無かったので、音声信号である重畳交流成分をより多く流すことができる電源用の超低ESR品のルビコン MCZを選択しました。
ルビコン MCZは680uF 10Vを使用しましたが、これがぎりぎり筐体に収まるサイズでした。
他の品種や容量でも構いませんが、基本的に680uFより大きなものは選択できないと考えてよいでしょう。
ヘッドホンドライバは、手持ちのピンコンパチブルなオペアンプを交換しながら16.5Ωの負荷抵抗を接続した状態でRightMark Audio Analyzerを実行し、多くの条件下で結果が良かったBurr-Brown OPA2353UAを選択しました。
ちなみにOPA2353UAはオープンループゲインが高く、比較的発振しやすいため、あまりお勧めしません。
他のオペアンプを使用する場合、ヘッドホンドライバは約+4.45Vの単電源でボルテージフォロア動作のため、位相補償無しでユニティゲイン安定なオペアンプが必要ですが、Chu-Moy式自作ヘッドホンアンプで採用されているものであれば大抵使用可能だと思います。
また前回の改造の後で追加の電源ラインのデカップリングコンデンサを交換してみたところ、そもそも全く効果が無かったため、今回は追加しませんでした。
手持ちの部品で改造したので今回の部品代は0円ですが、2013年5月1日現在、全て秋月電子通商で購入可能で、その場合は380円となります。

改造前改造後
カップリングコンデンサSTONE 470uF 10V 2個ルビコン MCZ 680uF 10V 2個
ヘッドホンドライバAnpec APA2308Burr-Brown OPA2353UA

改造後の基板の表面

改造後の基板の表面です。
今回は上手く半田付けが出来たので、周りの部品を融かさずに済みました。

RightMark Audio Analyzerの測定結果を以下に示します。
測定条件は、OSはWindows 7 x64 SP1、Xear Audio Centerのサンプルレートの設定はRightMark Audio Analyzerの設定と同じ、Speakersの音量コントロールのマスターは30(-17.7dB)、スピーカー設定はステレオ、Line-inの音量コントロールのライン入力は100(12dB)、その他は全て無効化または消音で、ヘッドホン出力端子からライン入力端子へ結線、ヘッドホン出力端子には16.5Ωの抵抗を並列に接続しました。
この設定では音声信号の振幅が小さくなりすぎる(約0.46Vp-pになる)ために測定結果が回路の本来の性能より悪くなりますが、一般的な使用を想定し、かつ高調波歪みがノイズに埋もれない程度の音量として、このような設定にしました。
つまりヘッドホン接続時のヘッドホン出力の歪みを測定することが目的です。
またライン入力の音量を12dB増幅していますが、これは入力の最大振幅が小さいとRightMark Audio Analyzerで測定できないためです。
参考までに普段音楽を聴くときに使っていたノートパソコンHP Pavilion dv5/CT(日本以外ではPavilion dv5t-1000)のオンボードサウンドでほぼ同条件(音量は30(約-17.7dB)、ヘッドホン出力端子から外付けマイク入力端子へ結線、ヘッドホン出力端子には16.5Ωの抵抗を並列に接続)の測定結果も載せておきました。
測定結果の詳細はこちらからダウンロードできます。

改造前改造後Pavilion dv5/CT(参考)
Sampling mode24-bit, 192 kHz24-bit, 192 kHz24-bit, 192 kHz
Frequency response (from 40 Hz to 15 kHz), dB+0.08, -1.08+0.05, -0.59+0.23, -0.40
Noise level, dB (A)-77.5-77.9-72.2
Dynamic range, dB (A)77.578.171.7
THD, %0.0700.00690.012
THD + Noise, dB (A)-60.8-74.7-65.4
IMD + Noise, %0.0880.0240.061
Stereo crosstalk, dB-74.4-76.7-50.4
IMD at 10 kHz, %0.0960.0250.059

元々Pavilion dv5/CTの音質がオンボードサウンドとしては良い部類なのですが、16.5Ωの負荷がある条件では、意外な事に無改造のAS372はオンボードサウンドより音質が良いとは言えないようです。
改造後は明らかに高調波歪みが減少し、さらにノイズも若干減少しました。
さらに16.5Ωの抵抗ではなくATH-C505M(公称インピーダンス16Ωのイヤホン、実測値は約16.5Ω)を接続して計測すると、改造前ではIMDの項目が大きく増加した一方で改造後では増加量が少なく、大きく差が開きました。
実際にATH-C500M(公称インピーダンス16Ωのイヤホン)で聴くと改造後の方がよりクリアに感じられました。
実はヘッドホンを接続しない無負荷時や音量を最大にすると改造前の方が良い結果が得られたのですが、ライン出力が別にあり、実際にはヘッドホン無しや最大音量でヘッドホン出力端子を使う事は無いため、音質は向上したといってもよいでしょう。
また最大音量では振幅が3.3Vp-p近くにもなり、DACの出力の段階でかなり歪みますので、あまり使うことはないでしょう。

ちなみに音量が30(-17.7dB)では音が大きすぎて聴くに堪えないので、普段は歪みを若干犠牲にしてノイズレベルを下げるために音量を66(-6.2dB)にし、ヘッドホン出力に800Ω(約-34dB)のアッテネータを接続していますが、この条件でも改造前よりは音質が少し改善されています。


目次 質問フォーム Q&A このサイトについて トップページ