MASTECH MS8209の温度計の校正方法
2009/12/20作成
2014/08/12更新
随分前に秋月電子通商で4000円程度で購入したデジタルマルチメータMASTECH MS8209が棚の奥にしまってあったのを思い出し、ちょっと使ってみたところ、残念なことに、この温度計は非常に不正確でした。
安物なので誤差が大きいことは想定していましたが、私の場合、説明書に書いてある最大誤差にすら収まっていませんでした。
そこで、この温度計の校正に挑戦してみました。
裏側の2本のねじを外し、蓋を外してみると、今時珍しく(安物だから?)可変抵抗が大量に並んでいました。
試行錯誤した結果次のことがわかりました。
- VR1は電圧計の調整用で、右に回すと電圧計の表示値の絶対値が大きくなる。
- VR2は抵抗計の調整用で、右に回すと抵抗計の表示値が高くなる。
- VR5は温度計の調整用で、右に回すと温度計の表示値が低くなる。
- VR6は温度計の調整用で、右に回すと熱電対を使用した時の温度計の表示値が外気温に近づく表示値の絶対値が小さくなる(0℃に近づく)。
- VR5とVR6の調整の結果はVR1とVR2に依存する。
可変抵抗のつまみを回すにはプラスドライバーなどを用いればよいでしょう。
ここで気をつけなければならないのは、VR5は精度が低く、1°回すだけで温度が約3℃変化することです。
また、温度計はVR1とVR2を調整した後で補正する必要があります。
つまり順番にまとめると次のようになります。
手順1. 適当な電圧源にリードを繋げ、VR1を回して電圧計を校正する。
手順2. 適当な抵抗にリードを繋げ、VR2を回して抵抗計を校正する。
手順3. 適当な2つの恒温熱源に熱電対を当て、その温度差が正しく表示されるまでVR6を調整する。0.0℃の恒温熱源(氷水など)に熱電対を当て、その温度が正しく表示されるまでVR5を調整する。
手順4. 一方の恒温熱源に熱電対を当て、その温度が正しく表示されるまでVR5を調整する。適当な恒温熱源に熱電対を当て、その温度が正しく表示されるまでVR6を調整する。
手順5. もう一方の恒温熱源に熱電対を当て、その温度が正しく表示されることを確認する。正しく表示されなければ手順3に戻り操作を繰り返す。
恒温熱源には、0.5%程度の精度でよければ、解けかけた氷水(0.0℃)や沸騰している水(100℃)、体温(36.5℃程度で、体温計であらかじめ計測しておく必要がある)などが利用できます。
今回は氷水と体温で測定し、その温度は表示値が1分間変化しなくなった時のものとしました。
校正前後の表示値を次に示します。
| 校正前 | 校正後 |
電圧(8.96V) | 9.02 | 8.97 |
抵抗(39.0KΩ) | 39.24 | 38.89 |
温度(0.0℃) | -3.6 | -0.2 |
温度(37.1℃) | 34.6 | 36.9 |
温度差(37.1℃) | 38.2 | 37.1 |
実はこの温度計、数日放置すると表示値がずれるようなので(VR5が原因か)、結局あまり役に立ちません。
まあ、温度差は維持されるようなので、測定前に氷水を用意し、その差を測定すればなんとか使えそうです。
2014/08/12追記
VR5をより抵抗値の少ない可変抵抗と金属皮膜抵抗を合わせたものに交換したため、放置してもほとんどずれることがなくなりました。
適切な抵抗値は個体により変わり、今回は紹介しませんので、各自で探してみてください。
ちなみに、湿度計の値は湿度70%程度の部屋で30%台の表示でした。
湿度計の値は気休め程度のものと考えるのが妥当だと思います。
おそらくこの調整によって容量計や電流計の表示も変わるだろうと思いますが、私はこれらの機能を使用しないのでよくわかりません。
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